プロジェクトの紹介 Introduction to the project

プロジェクト概要

普遍的な惑星大気環境の理解を目指して

 私たちの太陽系には、かつて水があったと考えられる寒冷な火星や、強力な磁場を持つ巨大な木星など、多種多様な惑星の大気環境があります。なぜ、同じ太陽をエネルギー供給源とするにもかかわらず、このような違いが生じるのでしょうか。我々は、これら太陽系惑星の多様な大気環境そのものを、現在の地球のみでは実現できない「極端環境の実験場」ととらえ、太陽と惑星大気環境の因果関係を、観測と理論の両輪で調べます。これにより、地球環境のみならず、過去・現在・未来の惑星大気環境を、統合的に理解することを目指します。

観測と理論を統合した研究アプローチ

 従来これらの惑星観測は、地上や衛星探査による光や電波のリモートセンシング観測が主たる手段でした。しかし、光や電波を発しない大気は観測できないなど、これら観測から得られる情報は限定的です。一方、惑星の下層大気から宇宙空間までを一貫して理解するためには、観測に加えて、エネルギーの流れや化学反応を理解するための理論モデルやシミュレーションが不可欠です。本プロジェクトでは、観測と理論の両者を統合した研究アプローチを、国際連携のもと、達成します。

国際連携と若手研究者の育成

 東北大学を核として、ハワイ天文学研究施設(IfA)と自前天文台による連続観測というユニークな共同研究ならびに先端装置開発の連携強化、ここには2名の若手研究者を派遣します。また、フランス大気環境宇宙観測研究所(LATMOS)ならびにドイツマックスプランク太陽系研究所(MPS)と理論研究を連携強化し、ここに別の2名の若手研究者を派遣します。この国際交流により、世界水準の視野と実力をもつ人材を育成し、かつ惑星大気プロセスの一貫システム的研究の国際研究拠点の確立を加速します。

プロジェクト1. 惑星大気 上下結合の観測

巨大惑星木星をターゲットとします。木星は、下層大気の巨大オーロラ、大気変動と上空の衛星イオの火山活動などで上下方向にエネルギーと物質輸送があり、これを解明します。このために、ハワイ大学天文学研究施設(IfA)のJeffrey Kuhn博士と共同し、IfAが有する世界最高の観測拠点ハレアカラ山頂の観測拠点を活用します。これまで我々は、ここに40cmの小型望遠鏡を設置し、観測をしてきましたが、今年度さらに60cm望遠鏡を国内から移設し、2台体制とします。ハワイ大学は、すばる望遠鏡があるハレアカラ山頂などに大型望遠鏡施設を展開し、機器開発は世界トップクラスです。我々は、そのIfAと共同し、先端的な赤外装置開発を達成し設置します。また、2013年9月にイプシロンロケットで打ち上げられた惑星観測衛星Sprint-A/EXCEEDとの国際共同観測も達成します。さらに、本事業により培われるハワイ大IfAの連携関係は、現在進めている惑星・系外惑星専用2m望遠鏡「PLANETS」へと発展的につながります。

プロジェクト2. 惑星大気変動の観測

火星をターゲットとしています。我々が開発し完成させた、赤外のレーザーへテロダイン超高分解分光装置を、ハワイ大学IfAのJeffrey Kuhn博士と連携し、ハレアカラの望遠鏡に実装します。この装置は赤外観測で世界最高分解能を有しており、火星のメタンならびに関連微量気体の観測に最適です。火星メタンは、生命活動や地殻活動の証拠となり得るため、世界的な注目を集めています。このためには、時間変動と空間分布を明らかにする必要があり、連続観測ができる自前の望遠鏡でしかなしえません。さらに、この自前の拠点を核とし、国際連携による複合同時観測へ発展させていきます。

プロジェクト3. 惑星大気変動の理論研究

東北大学が現在もっている領域毎の複数のモデルは、上空の磁気圏から可能の大気圏までをカバーしていますが、別々のモデルに分かれていました。これを観測と比較するために、また統合的に惑星環境を理解するためには、上空から下層大気まで結合させた、領域間結合モデルが必要です。このモデル開発を、世界的な理論研究を展開しているフランス大気環境宇宙観測研究所(LATMOS)のFrancois Leblanc博士ならびにドイツマックスプランク太陽系研究所(MPS)のP. Hartogh博士、Alexander S. Medvedev博士と連携して行います。このために、若手研究者1名をLATMOSに、また別の1名をMPSに派遣します。