インタビュー Interview

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Vol.3 派遣若手研究者インタビュー

鍵谷将人さん(東北大学助教)に聞く
「系外惑星を見据えて太陽系惑星を研究する」


惑星に憧れて

 そもそもなぜ研究するかと言えば、まだ誰も見たことのない新しいものを見たいから。私の場合、その対象が惑星で、昔からの憧れでした。幼稚園の頃は、近所のおじさんに連れて行ってもらい、プラネタリウムに毎日のように通いました。小学校4年生の時、父が買ってくれた口径10㎝のニュートン式望遠鏡で惑星を見るのが好きでした。そのうち惑星の写真も撮るようになって、中学生になると、望遠鏡を担いで暗い田んぼを探して歩きました。いわゆる天文少年だったのです。

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鍵谷将人さん(東北大学助教)


太陽系惑星の希薄大気やプラズマ発光を地上からとらえる

 太陽系内にあるいくつかの惑星の希薄な大気、あるいはプラズマ発光を、地上から観測する研究をしています。例えば、木星の衛星「イオ」は、太陽系内で最も火山活動が激しい天体と言われています。イオから放出される火山性ガスは、木星磁気圏にばら撒かれ、それが木星やその周辺にある衛星の環境に大きな影響を与えます。それらがどのような影響を与えており、どのような物理的理由で影響が与えられているかについて、私は研究しています。

 特に、我々の目で見える領域の光では、木星や衛星などの"まぶしい明かり"に比べて暗い、その周辺にある火山から噴出されたガスやプラズマ(電離したガス)の発光といった"微弱な明かり"を見なければならないという、観測上の困難があります。その困難を克服し、観測方法や装置を開発するところに面白みや工夫し甲斐があります。今まで見えなかったものを見えるようにしたいのです。

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図 1イオの火山ガスが宇宙空間に広がっていく様子を東北大学の惑星大気観測専用望遠鏡T60で観測した例。木星は火山ガスの発光に比べて極端に明るく観測の支障となるため、短冊状の遮光フィルタで覆い隠されている。


観測上の困難を克服し、見えなかったものを見る

 一言で言うと、「ハイダイナミックレンジイメージング」です。例えば、10,000の"まぶしいもの"がある中に、1の意味あるシグナルが混じっている時、10,000から1をどうやって見分ければよいかという話です。具体的には、明るいものを覆い隠すことで周辺の暗いものを見る「コロナグラフィ(コロナグラフ)」と、「高い波長分解能を持った分光観測」、現在この二つの技術で攻めています。

 太陽が月を隠すのが日食ですが、日食が起きると、昼間でも太陽近くの星が見えますね。「コロナグラフィ」とは、人工的に日食を起こすようなもの。模式図(図2)に示すように、望遠鏡に接続した光学系の中に明るい天体を覆い隠す「遮光マスク」を配置します。併せて、回折によって生じる邪魔な光を効果的に抑制する「瞳マスク」も配置します。これらのマスクによって、観測対象のごく近傍にある100万倍ほど明るい光を効果的に減光します。

 もう一つの高い波長分解能を持った分光観測ですが、太陽や惑星の光は特定の波長ではなく、広い波長範囲で光っています(連続光スペクトル)。それに対して我々がターゲットにするガスやプラズマの発光は、ある特定の波長で光る(輝線スペクトル)特徴を持つため、ある特定の波長に限って見れば、太陽から来る光の量を相対的に小さくできます。そのため観測する波長の幅を狭くしてやると、相対的に太陽のまわりのまぶしさが軽減されることになるため、それを実現するのが高い波長分解能をもった分光観測です。

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図 2 コロナグラフの原理を示した模式図


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図 3 観測する波長の幅(帯域)を狭くすると、相対的に太陽や惑星のまわりの眩しさが軽減される。


系外惑星を見据えて

 ハワイ州マウイ島ハレアカラ山頂に移設したT60(東北大学の口径60cmの惑星大気観測専用望遠鏡)に、ハイダイナミックレンジイメージング用装置を昨年12月に取り付け、一番心配だったステップを無事クリアできました。T60で得た経験は、現在準備を進める惑星・系外惑星専用望遠鏡「PLANETS」(口径1.8m)によるサイエンスをより具体的に描けるようになった意味で、良いステップになりました。現在は、高波長分解能の分光器を取り付ける準備をしています。私自身は太陽系外の惑星(系外惑星)に興味があり、少なくとも現在のステップの先に、系外惑星を見据えて研究をしています。ガリレオが望遠鏡で木星の周りを回っている衛星を見つけ地動説を確信したように、系外惑星をシミュレートするのに太陽系惑星はうってつけのターゲットなのです。

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図 4 米国ハワイ州マウイ島のハレアカラ山頂に完成したT60の前で


ものづくりと天文学への興味がつながる

 小さな頃から、ものを分解したり壊したりしながら、自分の好きなものを自分でつくることが好きでした。そこに天文学的・惑星科学的な観測という目的がつながったのは大学に入ってから。ものをつくる動機付けとしてサイエンスという目的がある楽しさを知ったのです。大仰に言えば、そもそもなぜ私たち人間は存在しているのだろう?と議論できるのは、哲学か天文学くらいしかありません。さらに、私たち人間以外に生命は存在するか・しないかを確実に言えるのは天文学だけです。今それにつながる仕事ができて面白いです。